ここ10年で3割の業者が後継者難で廃業、衰退する盆栽業界の未来とは

【BIZHINT】 盆栽職人は住み込みで5年間の修行が必要な世界です。ですが、業界でも職人の高齢化が進み、継ぎ手の減少が課題となっています。また、顧客の高齢化、新規顧客数の伸び悩む現状も問題です。歴史ある大樹園では最近まで「一見さんお断り」を貫いてきましたが、このままでいいのでしょうか? 業界の常識にとらわれず盆栽の魅力を発信し、新たな顧客層を開拓しようとしているのが愛知県岡崎市にある大樹園の次期園主鈴木卓也さん。飲食業から転身した彼は、なぜ「大樹園」という歴史あるブランドを継承し、業界全体をも発展させようと考えているのか。職人として技術を磨く一方、業界の次世代の担い手として、経営者として、古い体質の盆栽業界内でどのように信頼と協力を得ながら事業を展開しているのか、鈴木さんにお話を伺いました。

盆栽大樹園

鈴木卓也さん

1932年開園の老舗盆栽園「大樹園」の次期園主、4代目。大学で建築工学を学んだ後、地元の建築ディベロッパーでの営業職や、イタリアンレストランでの調理・接客、従業員管理等の職に従事した経歴を持つ。2011年、妻の実家の大樹園に婿入り。当初は盆栽と無縁であったものの、結婚3年目に後を継ぐことを決意。腕を磨き、大樹園の後継者と目されるように。国内外の盆栽展に積極的に参加し、受賞実績もあり。自分のやりたいことに挑戦、盆栽業界を引っ張る存在になりつつある。


大樹園を継承する重みを背負い、職人として経営者として生きる決意

――盆栽を始め、大樹園を継ぐまでには、どのような経緯があったのでしょうか?

鈴木卓也さん (以下、鈴木):私は婿養子で鈴木家に入りましたが、キャリアの最初は料理人です。イタリアンレストランに勤めているなか、東日本大震災がありました。子どもにも恵まれ、家族との将来を考えました。これから数年下積みを積めば自分のお店は持てる。ただ、その分家族と過ごす時間の確保は難しい。そこで浮かんだのが義父の大樹園です。

義父はどれだけ忙しくても家族の身近で仕事をしています。義父の仕事ぶりを見ていたら、自然と選択肢に挙がったのです。実は結婚後、盆栽とは距離を置いていました。元々私も凝り性で、「楽しさを義父に聞いたら絶対、盆栽にハマる……」と薄々思ってましたから(笑)。一大決心して「継ぎます」と義父に伝えたら、予想していなかったようでびっくりされましたね。

盆栽業界では、5年間の修行が必要です。 修行先では「大樹園は盆栽業界の一大ブランドだ。帝王学を仕込んでやる」と言われて戸惑いました。後から、大樹園が業界では5本の指に入ると聞き……。そもそも伝統や歴史のスゴさを理解していたら「自分が継ぎます」なんて大それたことを言えません。現在の自分ならば、

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